大劇場で興行された歌舞伎・浄瑠璃の上演番付、浮世絵を除いた一枚物の芸能関係出版物及び芸能関係周辺資料である。

　近世後期には冊子形態をとらない一枚物の出版物が多数刊行され、その流れは明治以降も続いた。こうした出版物の題材として、庶民の生活に深く根差していた芸能が頻繁に取り入れられる。中には歌舞伎の上演番付形式を借りて世相を諷刺したり有名人を並べたもの等も含まれており、当時の芸能文化の浸透度を推し量ることができよう。

　資料の大部分は、ほぼ同じ大きさの台紙に一点（小さい資料の場合は複数）ずつ貼った状態で保管されている。また台紙に貼付された資料には必ず同じ旧蔵印が押されていることから、一人の旧蔵者によって収集されたものであったと推測できる。

　種類は多種多様であるが検索の便宜を考え、見立番付、一枚摺、給金付、番組、引札、双六、口上、座席表、価格表（値段付）、劇場図、書簡、証券、からくり芝居番付、見世物番付、小芝居番付のように分類した。このうち一枚摺については、抜文句、年代記、摺物等のように細分化した。また1点の資料に複数の要素が含まれているものについては、該当する種類名全てを列挙している。資料の中で点数が最も多いものは、角力番付の形式を借りた見立番付である。見立番付は近世後期から盛んに作られており、日本大学において所蔵数比率が一番高いことも当然の事と思われる。

　一枚物出版物はどれも趣向を尽くし機知に富んだものであったが、いずれも時々の流行に即した内容であるために読み捨てられることが多かった。また保存に適さない形態でもあることから、現在では散逸が甚だしい。本資料のように台紙に貼付されてはいるものの、ほぼ原型を留め、さらに大量に所蔵されている事例は非常に稀である。今回紹介することにより、本資料は芸能だけではなく、近世期の文化、出版、風俗史料としても有効なものとなり得るであろう。